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うつ病は、薬を飲んで休養すれば治る、という定説が崩れつつあります。
医療現場では、薬を飲んでも良くならないうつ病や、うつ病の再発が問題視されています。
私がお会いする方々は、うつ病の診断をされ、薬を飲んで1年以上経っても状態が改善しなかったり再発したりして、薬物治療以外の回復の手がかりを求めて来られた方々ですが、こうした方々の回復のプロセスから見えてきたことを、以下にまとめてみました。
■うつに陥りやすい考え方や行動
ストレス対処は、自分のストレス危険信号への気づき、ものごとの受け取り方や考え方、感情の処理、そして行動力など、トータルなスキルによって成されます。
うつに陥りやすい人には、多くの場合、うつに陥りやすい考え方や行動の傾向が見られます。
うつ病から回復した人は、うつをキッカケに今までの自分のストレス対処の仕方を見直し、それまでとは違った対処の仕方を試みたり対処の選択肢を増やしたりしている方も多く、実は薬を飲んで休んだだけというわけでもないようです。
このストレス対処にあまり変化が無いと、再発の可能性が高まります。
自分の考え方や行動の傾向を見直すためには、認知行動療法などの心理療法が用いられます。
もしも、まじめに受けとめ過ぎる、ネガティブな考えが湧きやすい、完璧主義、自分だけで解決しようとする、人に相談できない、などに思い当たったら、薬物治療と並行して心理療法を受けることをお勧めします。
■対人関係の問題
ストレス対処の一部として含まれることですが、対人関係によるストレスの対処は、相手もあることですから、他のストレスよりも対処が複雑になります。
うつのキッカケが対人関係によるものが大きい場合、薬を飲んで休んでも、社会に出ればまたストレスにさらされます。
環境が大きく変化して、それまでとは違う人間関係の中で、うまく回復できる場合もありますが、何かのキッカケで再び対人関係のトラブルを抱えた場合、以前の問題を整理し消化してないと、思わぬ大きな傷つきになってしまうことがあります。
対人関係の問題で、うつを再発してしまうケースは少なくありません。
対人関係のことは、棚卸しをしておくことが大切です。
■中年期のうつ
人生の折り返し地点にさしかかり、ゆっくりと自分を見つめ直したり、これからの人生のことを考えたりすることが必要な時があります。
どこかで「このままで行きたくない」とずっと感じているにも関わらず、走りつづけることをやめられない、、、、それがうつ病という形で、その人に強制的なストップをかける時があります。
そのような中年期のうつは、今までとは違う新しい方向性や生き方が見えてこないと、回復しない場合があります。
自分から立ち止まることが難しかったくらいですから、治ったらまた走り出してしまうので、無意識はそう簡単に回復を許してくれません。
でも、そういう自分にじっくりと付き合っていくと、今までとは違う未来が開けてきます。
私のところで中年期のうつから回復したクライアントさん全員が、「うつになって良かった。そうでなければあのまま不本意な人生を送らなければならなくなっていた。」と言っています。
中年期のうつは、新しい自分の誕生のプロセスとも言えるのです。
■家族病理
うつ病が回復しないのは、実は家族システムの問題だった、というケースもあります。
家族はその一人一人が相互に影響を与え合い機能する1つのシステムであり、システムとしての問題が、家族のメンバーの1人に病気や問題行動という形で現れる場合があります。
その場合、うつ病が回復しないのはなぜか?と考えるのではなく、うつ病を継続させなければならない家族システムの事情が存在する、という視点でセラピーを進めていくと回復していくのです。
■家族システムの発達と変化
上記の家族の問題の一部ではありますが、家族がシステムとしての大きな変化を求められる時期というのがあります。
たとえば子供の独立、夫の定年、介護などで、それまでそれぞれのメンバーが家族の中でとってきた役割を変化させなければならない状態になった時に、その変化がスムーズに行かないと、誰かがうつになったり問題を起こしたりすることがあります。
そのような場合には、家族の発達のプロセスという視点を持ちながら、メンバーの相互関係に変化を促すようなアプローチが必要になります。
■怒りを溜め込んでいる、、、!?
こう書いても、実は自分が怒りを貯めていることに気づいていない人には、全くピンとこないのですが、実際、うつの方にお会いすると「怒ってないふり」がうまい人が多いのです。
自分は「そんなこと」では怒らないし納得している、たとえ理不尽なことでも、冷静に対処している、、、、
そう思い込んでいても、実は夫に対して、妻に対して、パートナーに対して、親に対して、
上司に対して、会社に対して、社会全体に対して、、、
つきつめれば自分に対して、怒っていたりするのです。
溜めている怒りが自分の内側に向かうと、身体を壊したりうつになったりします。
怒りは、自分を危険から守るための大切な情動で、無視したり抑えつけたりしていいものではありません。
自分の怒りを理解し、それを適切に扱うことができるようになると回復していきます。
■大人の発達障害
近年、大人の発達障害という言葉も広く知られるようになりました。
「障害」という言葉から必要以上に悪いイメージがありますが、
1人の人を「発達」という視点から見た場合、
優れた部分(とても発達している部分)とそうでない部分の差が大きい、という意味です。
その差のせいで、社会に適応することが困難になることがあり、
それが原因でうつ病などになることがあります。
その場合のうつ病は2次障害であり、薬物治療だけではその人の根本的な助けにはなりません。
大人の発達障害に対する専門的なサポートが必要になります。
実際には、これらのどれかに当てはまるというのではなく、大抵は複数のことが同時に存在しています。
うつ病の長期化や再発に苦しんでいる方々への情報として参考になれば幸いです。
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